大人のための洋書絵本・ちょっと難しめ7冊

絵本は子どもだけのものじゃないと、英語の絵本が好きになって気がつきました。日本語の絵本も同じだと思いますが、英語の絵本のほうが大人のための絵本が多いような気がしています。今日は大人のための洋書絵本を紹介したいと思います。

大人のための洋書絵本

私が思う大人のための洋書絵本は、テーマが深く難しいものが多いです。深くて難しいテーマでも絵本なので、子どもも読めるように平易な文章で表現されています。

難しいテーマを子どもも読めるように平易な文章で書くということは、実はとても難しいことです。まだ小難しい言葉を使って書く方が、書くほうも読むほうもよっぽど容易であることに気がつきます。

平易な文章はするどく核心を突き、心の中に入ってきます。人生経験を積んだ大人だからこそ、深く突き刺さるのだと思います。だから絵本はこんなにも大人の心を震わすのだと思います。今日は大人のためのそういう洋書絵本を紹介します。

Fly Away Home

YL1.4
総語数1039

ホームレスの父と息子が過ごすのは、空港の中。ここに住んでいることを職員に知られないように、目立たない服を着て旅人を装わなくてはなりません。驚くべきことに、現実問題として空港で暮らす人々がいて、それを絵本化したのだそうです。空港で暮らすホームレスというだけでも衝撃なのに、親子連れ。その生活がどのようなものであるのか、この物語を読むまで想像できなかったのですが、厳しい暮らしぶりとそれを受け入れるしかない子どもの思いが伝わってくる作品でした。

Emily

YL3.5
総語数1722

お向かいの黄色い家に住む不思議な女性。彼女は人前に出たがらず、家に誰かが訪ねてきても家の中に隠れてしまうのだとか。そんな彼女を近隣の人達はMythと呼んでいます。ある時、少女の家に一通の手紙が。それは黄色い家からのお母さんへの依頼で、家にピアノを弾きに来て欲しいという内容。初めて入る黄色い家。そこで初めてMythに合う少女。あとがきには女性について書かれていました。Emily Dickinson。1800もの詩を残し、子ども達が友達だった彼女は、限られた空間で自由な心と驚きに満ちた世界を生きていたのかもしれません。(語数はAfterword200語も含む)

Eleanor

YL4.5
総語数2210

Eleanorという名の女の子が、やがて素敵なレディに成長し、アメリカのルーズベルト大統領の夫人、ファーストレディになったのでした。幼いころは美しい母に勇敢な父を持ち、裕福な暮らしをしていましたが、愛情に恵まれずさびしい思いをします。子どものときに病気で母を亡くし、事故で父を亡くし、弟も病気で亡くしました。容姿に恵まれなかったこともあり、親戚宅に引き取られてもおしゃれをさせてはもらえませんでした。母の想いを叶えるといって、叔母が15歳のEleanorを寄宿舎へ入れました。そこで素晴らしい教育や人間関係を築き、卒業の頃には見事は女性になっていました。ファーストレディという華々しい立場にいた人の幼少時とは思えない意外さと、環境と出会いによって人はこんなにも変わる驚きを感じた物語でした。

GOLEM

YL4.3
総語数1461

これはユダヤの歴史を知らなければ、難しい内容です。物語はゴーレム伝説、1590年のこと。プラハでユダヤ人がゲットーに閉じ込められます。当時ヨーロッパではユダヤ人は異教徒と言う理由で、激しい迫害を受けていました。ユダヤ人を憎む一部のキリスト教徒により、過ぎ越し祭で食べる種無しパン(マッツォ)に、キリスト教徒の子どもの血を混ぜているというデマが流され、ユダヤ人への迫害が激しくなっていました。身の危険を感じたユダヤ教徒のトップ、ラビが巨大泥人間を作り、ユダヤ人の命を守る役目を与えます。ゴーレムの力を恐れた皇帝が、ラビにユダヤ人に危害を与えないことを約束し、ゴーレムを泥に戻すように言います。ゴーレムは 恐ろしいだけの巨大泥人形ではなく、美しい自然を感じる心を持っていたのでした。泥に戻りたくないとラビに懇願するシーンは切なかったです。コルデコット賞受賞作品です。

The Man Who Walked Between the Towers

YL2.0
総語数780

ワールドトレードセンターがニューヨークにあったころの話・・・。フランスの大道芸人フィリップが、この二つのビルに綱を渡し、綱渡りをします。恐ろしい高さ。足がすくみそう。イラストと文章から、まるで自分がその場に立っているような緊迫感が伝わります。実話です。コルデコット賞受賞作品。

Thunder Cake

YL2.2
総語数1122

雷が大嫌いな女の子は、ロシアから来たおばあさんの家に行くのが大好き。おばあさんはミシガンに住んでいます。ミシガンの夏は嵐がきます。女の子の嫌いな雷がやってくるのです。このお話は、おばあさんのサンダー・ケーキで女の子が雷の恐怖を克服したお話です。サンダー・ケーキのレシピが気になって、実際に作ってみる人もいるとか。私の大好きな作家さんの一人、Patricia Polaccoの絵本です。

The Widow’s Broom

YL3.5
総語数1600

魔女が必ず持っている空を飛ぶほうき。そのほうきの魔法がなくなってしまい、魔女と一緒にある家の畑に墜落します。魔女は次の日にいなくなりますが、ほうきはその家に残されます。家には未亡人が住んでいました。未亡人は朝からほうきが床を掃き掃除しているのを見てびっくり。そのうちに掃き掃除以外の家の仕事を覚え始めます。物覚えの良いほうきに、夫人も大満足。ところがこの不思議なほうきをよく思わない隣人たち。あることが引き金になり、恐ろしいことが怒ります。

苦手な分野も得意な分野も英語だから同じように楽しめる

私は科学の分野が好きで得意です。逆に歴史が苦手であまり好きではありません。けれど洋書絵本となると、科学も歴史も両方とも楽しんで読むことができます。子どもも読むものだから、平易な文章でイラストもあって理解しやすいのです。

世界史なんて、高校の選択科目だったので取っていなかった、という理由でユダヤの歴史なんて全く知りませんでした。だからユダヤの文化も宗教も、よくわかっていませんでした。でも苦手な分野については洋書絵本を読み終えた後に、よくわからなかったことをインターネットで調べたりするようにしています。

違う洋書絵本でまた同じ時代や文化が背景になっている物語に出会うと、より理解が深まります。そんな風に徐々に自分の世界も広がってくるのも楽しいです。

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