もっと洋書が楽に読めるための語彙集 Vol.1 キーツのDreamsから

多読で伸ばせる英語力は、なんといっても語彙力、読解力。多読をしている最中には辞書は用いないのが鉄則。けれども多読歴が長くなってくると、知らない単語が徐々に減っていき、代わりにはっきりとは理解しているわけではないけれど、何となくわかる言葉が増えてきます。文中というか、物語の中にあると、辞書を引かなくても大体推測でわかるという言葉が多くなってきます。そんな言葉たちは難しい単語ではなく、単語という単位では意味がわかるのだけれど、いくつか簡単な単語のかたまりになるとどういう意味になるのかわからなかったり、何となくこうかな~というものが多い気がします。

そこでこのカテゴリー「簡単なのに「?」なフレーズ」では、日々私が読む洋書の中で、「これは知っていると役に立ちそう!」と思うフレーズを取り上げていきたいと思います。読者の方と一緒に学習する場となれば幸いです。

『Dreams』

洋書のタイトルは『Dreams』。日本語のタイトルは『ゆめ』です。Ezra Jack Keats作、キーツ作です。この洋書絵本の中から、いくつかフレーズを拾ってみたいと思います。

この洋書絵本『Dreams』は、ページ番号が書かれていないので、場所を指定するために「いくつ目の見開き」という表現を使います。ストーリーが始まる見開きページを「1つ目の見開き」、ストーリーが終わる見開きページを「ラストの見開き」として数えています。

growは「なる」

<2つ目の見開き1行目>、<ラストから見開き5つ前の1行目>の2箇所にgrew(growの過去形)が出てきます。こんな文章です。

<2つ目の見開き1行目>
As it grew darker, the city got quieter.
だんだん暗くなるに連れて、町は静かになっていった。

<ラストから見開き5つ前の1行目>
The shadow grew bigger – and bigger –
その影は大きく大きくなっていった。

grewはgrowの過去形で、growとは「成長する、育つ」という意味ではよく知られていると思います。洋書を読むようになると、「成長する、育つ」以外の意味のgrowを頻繁に見かけます。この二つのgrowは、「(ある状態に)なる」という意味で使われています。この意味のgrow、私の10年以上の多読経験の中で、かなりの頻度でみかけます。

wait till すごいことがあるんだぞ

<ラストから見開き3つ前の3行目>にwait tillというフレーズがあります。
“Wow! Wait till I tell Archie what happened!”
「わぁ!Archieに何が起こったのか話したらびっくりするぞ。」

wait tillは「・・・まで待つ」という意味ですが、他にも「~をお楽しみに、~したら驚くよ」という意味があります。多読をしていると辞書をひきませんが、経験を積んでくるとwait tillを見たときに、このセリフを行った人物であるRobertoがどんな気持ちで友達のArchieに、この出来事を話そうと思うのかまで考えるようになります。すると自分ならかなり興奮して、友達に出来事を話すでしょう。友達の驚く顔が見たくて、早く明日の朝になって欲しいと思うでしょう。待ちきれないほど楽しみな気持ちなのではないかと推測します。

そう考えると、「・・・まで待つ」と「~をお楽しみに、~したら驚くよ」というwait tillの意味は、全く別物には見えませんね。それが「強い語彙力」なのではないかと、私は思っています。場面によって、自然に意味が汲み取れるようになるということですね。母国語では誰もが無意識にしていることだと思います。

some たいしたもんだ

<ラストから見開き3つ前の5行目>にsomeを使ったこういう表現があります。
“That was some mouse!”
「たいしたねずみだな!」

someには「たいした、なかなかの、かなりの(量の)」(形容詞)という意味があります。Robertoが”That was some mouse!”「たいしたねずみだな!」と言ったのは、見開き1つ目の6行目に友達のAmyが、紙で作ったRobertoのねずみを見て”Does it do anything?”(「それ、何かするの?」=何か面白いことしたり役に立ったりするの?何ができるの?)と聞いたことを受けたセリフです。そのAmyの問いに対して、Robertoは”I don’t know,”と返していました。

ある出来事の後に、Robertoが「たいしたねずみだな!」と言ったのは、ただの紙で作ったねずみなのに、ネコの窮地を救うという大それたことができた驚きの気持ちが込められているのですね。

something すごい

someの「たいした、なかなかの、かなりの(量の)」について書いたついでに、somethingにも触れたいと思います。somethingの名詞としての意味は、「大した(すごい)物(人)、大切な(大事な・重要な)もの(人)」です。

“That’s something.”というと、「それはすごい」という意味になります。このsomething、会話にも結構使えそうですね。

『Dreams』のおわりに

いかがでしたか?これから知っていると洋書を読むときや、英会話で役に立ちそうなフレーズをぼちぼちと紹介していきます。これを手引きにして、洋書の多読を始めてみるのもよいかも^^ 『Dreams』、図書館やお店で探してみてくださいね。日本語訳の絵本(『ゆめ』)と照らし合わせながら見てみると面白いですよ。作者はキーツ。絵本好きな人ならほとんどの人が知っている、コルデコット受賞経験のある作家さんです。

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