エドワード・ゴーリーのファンというわけではないのですが、興味本位で1冊見てしまった絵本が始まりで、何冊か買ってしまいました。収集しようとは思っていないのに、6冊家にあるのでそれらを紹介してみようと思います。
画像は日本語のタイトルだけになっていますが、中身は日本語と英語の両方で書かれています。英語が難解なので、英語の絵本よりも、英語と日本語の両方で書かれている本がおすすめです。
ゴーリーは高く評価されている作家の一人であり、熱烈なファンや収集家がいるようですが、私はそこまで詳しくないので、絵本を読んだ感想ぐらいしか書けませんということを、初めにお断りしておきます。
最高に気分が落ちてしまうストーリー
絵本を読み終えて、ここまで気分が落ちたのは初めて。気持ちが落ちているときには、読んではいけない絵本かも。
The Gashlycrumb Tinies ギャシュリークラムのちびっ子たち
YL1.2
総語数220
Aから始まる名前の子からZで始まる名前の子までの26人の子どもたちが、事故や事件などで一人ずつ死んでいきます。それぞれの子どもたちがどのように死んだのか、そして死ぬ瞬間、死んだ後などが描かれています。ただそれだけの絵本と思えばそれまで。こんなにも次々とあっけなく死んでいく子どもたちを見ながら、生と死の境なんて紙一重。誰がいつ死んでもおかしくなく、生きているのが当たり前と思っていることが当たり前じゃない、すごいことなんだと気づかされます。
The Loathsome Couple おぞましい二人
YL3.5
総語数476
実際に起きた事件を元に描かれたストーリーというのが、さらにおぞましさを強くします。狂気に満ちたストーリー。ろくでもない家庭に生まれて、奇妙な暮らしを始める男女。二人だけのことならまだしも、子どもをさらっては恐ろしいことを・・・。読後、憂鬱になります。けれどもやめられないエドワード・ゴーリーの魅力は不思議です。彼の作風だから許されるというところがあるのかも。
救いようのないストーリー
とことん救いようのないストーリーってあるのね・・・と思ったのが、次に紹介する絵本です。
The Hapless Child 不幸な子供
YL2.8
総語数285
恵まれた家庭で生まれ育った女の子Charlotteは、父母から大切にされていました。ある日、お父さんがお仕事でアフリカへ単身で渡ることになりました。そして不幸にも、アフリカでお父さんが死んだという知らせが。お母さんは病に臥せり、そして死んでしまいました。そこからどんどんと不幸の坂を下り始めるCharlotte。どこへ行っても辛いばかり。Charlotteはこの先どうなっていくのか、見るのが怖いような・・・。結末に身が凍りました。
The Pious Infant 敬虔な幼子(けいけんなおさなご)
YL3.5
総語数324
主人公のヘンリーは3歳にして、自分には邪(よこしま)な心があることに気が付きます。そんな自分でも神は愛してくださると悟るという話の始まり方からして奇妙。この幼子の恐ろしいほどの信心深さに震えつつ、次はどんなエピソードがあるのかわくわくします。訳者のあとがきは必読。多少なりともこの物語をわかるヒントが得られるでしょう。もっとも訳者ですらよくわからないというのだから、結局は作者の意図までは読み解くことは難しそう。そこがまた、この作品の魅力なのかもしれません。
不気味で奇妙なストーリー
意味不明で不気味。でもなぜか読んでしまう。そんな絵本を紹介します。
The Doubtful Guest うろんな客
YL3.5
総語数279
まず日本語の「うろんな」という意味がわからないが、英語のdoubtfulを見て理解。なるほど、とんでもない奴が来た!なんいうか、傍若無人?自由奔放?まるで赤ちゃん?とにかく聞く耳を持たなければ、普通のセンスも持ち合わせていません。読んでいるうち、どちらが変なのかわからなくなってきました。そんな奇妙なストーリー。
The Epiplectic Bicycle 優雅に叱責する自転車
YL4.0
総語数317
日本語が併記されているものでなければ、結構難しいかも。翻訳家の柴田元幸さんのあとがきも面白いので一読がおすすめ。不思議なストーリー。章立てになっているけれど1章が非常に短く、しかも数字が飛んでいるのも奇妙。謎が多く、どこか惹かれてしまう作品。
The Dong with a Luminous Nose 輝ける鼻のドング
YL3.6
総語数683
Dongという一人の男性が、夜な夜な光る鼻であちこちをさまよい歩くお話し。Dongの鼻はもともとは光っていなかったのです。以前海岸にJumbliesの人々が乗った船がたどり着きました。その人々の中の一人の女性に恋したDong。それはそれは楽しい毎日でした。けれどその幸せは長くは続きませんでした。わけのわからないストーリー。けれど引き寄せられてしまうこの魅力は何なのか。イラストが不気味で面白いです。
色眼鏡では見えない、残酷と不条理の奥にある姿
エドワード・ゴーリー作の普通じゃない作品は、どこが良いと言葉では表現し難いけれど、魅せられてしまいます。絵を高く評価されているみたいですが、私は絵のことはわかりません。味のあるイラストであることはわかりますが。
英語だけの絵本と、英語と日本語が併記されている絵本があります。難しい英単語がたくさん出て来るので、日本語訳と照らし合わせてながら読むのが良いかもしれません。もっとも日本語訳ですら難しいし、言葉の意味がわかったところで内容の理解も困難なものが多いです。
それでもどこか不気味で奇妙なストーリーや、おぞましくて不快にもほどがあるストーリー。著者自身も一風変わっていて、毛皮にテニスシューズと大きなアクセサリーを身につけて観劇に現れたと言われています。謎が多く、私は興味深いです。
子どもが残酷な死に方をするなど、一見邪悪なもの好きな絵本なのかなと思いきや、よく考えてみると別のことが見えてきます。エドワード・ゴーリーの絵本が多くの人を魅了する理由は、道徳や倫理観を剥がしていき、その奥にあるものを何の偏見や都合の良い期待感もなく、あるがままを描いた部分があるからなのかな~と、思ったりしています。
人により感じ方は様々ですが、いたずらに残酷な絵本を書いているのではないことは、エドワード・ゴーリーに対する評価からも見て取れるように思います。