たましいの故郷 The Great Blue Yonder

平凡な日常、あたりまえの日常は、また明日も続くと約束されているわけではないということを感じた1冊でした。

あたりまえの日常、明日も続くとは限らない

洋書のタイトルは『The Great Blue Yonder』、日本語のタイトルは『青空のむこう』です。Harryという主人公の少年が、交通事故にあい、この世を去るところから物語が始まります。

人は死ぬと、「Other Lands」という場所へ行き、その先にある「Great Blue Yonder」というところを目指すらしい。Harryは死んだことは理解できても、まだ「Great Blue Yonder」には行きたくないと感じます。家を出るとき姉とけんか別れしてそのまま事故にあって死んでしまったからです。

心にもないひどいことを言ってしまった。まさか自分が死ぬなんて思いもしなかった・・・。

Harryは、Other Landsで知り合った年老いた男性Arthurと一緒に、ゴーストとして、この世に舞い戻ることにしました。こんなことができると知ったHarryは、喜び勇んで懐かしい友や家族に会いに行こうとしますが、そんなHarryにArthurは忠告しておきたいことがあるようです。いったい何を?

序盤から涙が止まらないシーンがありました。いつ死ぬかなんて、予測できない。だからどんなときも後悔のない生き方をしたいとは思っても、明日は必ず来るものだと思っているのが普通。

息をしたり、何かに触れてその感触を感じることも、人と会話ができることも、寒さや暑さを感じることも、すべて永遠のものではない。いつ終わりがおとずれるかわからない。当たり前すぎて、そのありがたさを感じられない。そんなことを改めて感じた1冊でした。

Harryは「やり残したこと」をするために、この世にゴーストとして舞い戻ってきます。学校で懐かしい友を見たり、嫌いだった子の意外な一面を発見したり、自分がいなくても世界はうまく回っていくのだということも知り、家族の深い悲しみを知り、そしてけんかしたままだった姉とは・・・。

学校での一場面、そして最後のほうの姉とのシーンは、涙なしでは読めませんでした。全体的にはHarryのユーモアあふれる語り口が軽快で、それほど重たい物語ではありません。

The Great Blue Yonderという場所・・・。私はここは「たましいの故郷」だと感じました。とてもいい物語でした。

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