今回は、懸命にがんばらなくても楽しみながら自然に英語のリーディング力が伸びる、簡単な英語から始める楽しい4つのことを解説します。効率よく学びたい人にとっては、メインに持ってくると良くない方法かもしれません。効率よくちゃっちゃと学びたい人は、それなりの学習をしつつ、休憩がてらこの方法を取り入れるとさらに効率アップすることでしょう。逆に効率的に学ぶよりも、じっくり学びたい人・時間がかかっても英語感覚を留学なしで育てたい人には最適な方法です。また英語は嫌いだけど、何とかしたいと思っている人にもおすすめしたい方法です。
簡単な英語を読むことが絶対大事!
リーディング力を磨くために、興味もない小難しい英語を読むのは良い方法とは言えません。卓越した記憶力もなく、英語が得意でもないごく普通の人は、辞書なしでも理解できそうな英語で書かれた本を選んで読むことをおすすめします。
簡単な英語の本って例えばどんな本?
では簡単な英語の本とはどんな本のことなのか、詳しく説明しましょう。「簡単」といっても人によって感じ方は違うので、最終的には自分がどう思うかで決まるのですが、ここでは易しい英語で書かれた本を紹介します。
日本語にも翻訳されているので、ご存知の方は多いと思いますが、『THIS IS NOT MY HAT』という英語の絵本があります。
日本語のタイトルは『ちがうねん』です。これは絵本ですが、大人が読んでも面白いです。日本語訳は絵本作家の長谷川義史さんで、大阪弁で訳されているので日本語訳も原書とはまた違った面白さがあります。
読んだことない人は、ぜひお近くの図書館で日本語訳か英語の本を読んでみてください。絵本の英語は日本人の大人でも、英語に慣れていなければかなり難しいものもあります。でもこの絵本の英語は平易な文章で読みやすいです。次に少しだけどんな文章なのか紹介しましょう。
I just stole it.
I stole it from a big fish.
He was asleep when I did it.
出典:Jon Klassen著 『THIS IS NOT MY HAT』 Walker Books Ltd (2014/6/16) 1-4 page
上の文章は絵本3ページ分の分量です。絵本はストーリーの部分だけで全26ページです。量が少ないのですぐに1冊読み終えることができるし、英語も難しくないので頭を抱える必要はありません。
私は多読を知った日から多読を始めたのですが、初めは簡単な英語を読む目的で英語の絵本を読んでいました。どちらかというと、しぶしぶ読んでいたのです。けれども絵本の面白さ・奥深さに気づいてから、絵本が大好きになりました。絵本は子どもだけの読み物ではないと思います。大人だからこそ理解できる、感じられる何かが絵本にはあります。文字だけの大人の本は確かに面白いですが、絵本には独特の世界観があり、それに魅力を感じた大人は間違いなく絵本にハマります。
リーディング力を伸ばしたいなら、ぜひやってほしい4つのこと
本題です。英語のリーディング力をぐーんと伸ばしたい人に、ぜひやってほしいことが4つあります。今まで常識と思っていたことと反対の事柄があるかもしれません。今まで信じていた常識が間違いというわけではないのですが、これから紹介する4つのことは、リーディング力を伸ばすために必要な力を養ってくれます。
リーディングの方法には大きく分けると精読と通読がありますが、今から紹介する4つのことは通読する力を養う方法と言っても良いかもしれません。通読とは、始めから終わりまで読み通すことです。これに対し精読とは、細かい所までよく注意して読むことです。
リーディング力を伸ばすためには、通読する力が必須です。学校の英語授業では通読よりも精読に力を入れていたと思いますが、大量の英語をスラスラと読むためには通読する力が必要です。小説などを読んで楽しむには、この通読が必要であることはわかっていただけると思います。まず通読ができなければ森を見ることができません。木の細部ばかり見ていても疲れるばかりだと思いませんか。森の様子をまず理解し、それから細部へと入って行った方が興味が持てるのではないでしょうか。
そういう力を養うための4つの事柄を紹介します。
辞書を引かない 辞書に頼らない読み方を身につける
知らない言葉が出てきたからといって、いちいち辞書を使って調べることはしません。知らない単語は前後から推測して読んでいきます。辞書で調べることが当たり前と思ってしまうと、いつまでも辞書に頼る読書しかできません。辞書に頼らないで読む力を養うためにも、辞書から離れる癖をつけましょう。
私たちの母国語である日本語で小説を読んでいるときを思い浮かべてください。知らない言葉が出てきたら、そこでいちいち辞書を引きますか?まれに辞書を引く人はいると思います。そしてそんな人は非常に多くの語彙を身につけていると思います。平均的な人でなく、言葉に対して思い入れのある人ではないでしょうか。
英語に対していきなりそこまで思いを入れる必要はありません。知らない単語は前後から推測してみましょう。もしも推測できなかったとしても、読書を中断してまで辞書を引く必要はなく、そのまま飛ばして読めばいいのです。知らない単語は辞書を引かねば英語が読めるようにならないという一種の呪縛のようなものから自分を解き放してあげましょう。自由に読んでいいのです。
推測が間違っていたらどうする?わからないまま放置してもいいの?と不安になる必要はありません。間違えることなく言語を習得できる人なんて存在しませんから。人は勘違いや間違いを繰り返しながら、言葉を覚えていくのですよね。母国語なら間違えることなく使えますか?そんなことはないはずです。では見方を変えて、辞書を引いたら一発でその言葉を理解し、記憶することができるのでしょうか。それも普通の人には不可能でしょう。
英語を学ぶ上で大事なことは、興味を持って楽しく続けることです。そうであるなら、辞書を引くわずらさしさや、辞書を引いたからには覚えなくてはいけないというプレッシャーを与えるのはやめたほうがいいのです。それよりも、気の向くまま楽しみながらどんどん英語を乱読して、何度も同じ単語に出会い、自然にその言葉を記憶し、いつしか意味を理解するようになるほうが楽しくないですか?
私は英語の勉強が大嫌いでしたが、この方法で楽しく英語を読み続けることができています。単語を暗記する努力をしなくても、自然に語彙を増やすことができています。必死で英単語を暗記したり例文を覚えようとしたときもありましたが、その時よりも使える言葉を身につけられるようになりました。
そればかりか、文脈から知らない単語の意味を推測するのも上手くなりました。実は推測は慣れでできるようになるのです。日本語に置き換えて想像してみてください。あなたは目にする日本語の文章に使われているすべての単語を知っていますか?時には知らない単語を目にしても、前後から推測して文章全体の意味を理解していませんか?子どもはどうですか?彼らははじめて目にする単語に遭遇しても、理解できるその他の言葉から上手く推測して語彙を増やしていると思いませんか?
辞書も確かに便利なツールですが、辞書だけに頼っていては時間が足りません。ただでさえ忙しい現代人は、通読する力を身につけるためのあらゆる方法を駆使するべきです。
日本語に訳さず理解 読むスピードが極端に遅くなるから
言ってしまえば当然のことなのですが、いちいち英語から日本語に訳していると非常に時間がかかります。時間がかかる読書は面白いですか?ほとんどの人は疲れると思います。日本語の読み物でも、難解な言葉や不慣れな表現などがやたら多いと読むのに時間がかかり、疲れてしまうのと似ています。
だから日本語に訳さないのです。「えーでも難しい・・・」と思いますか?だから「簡単な英語を読む」のです。簡単と思うレベルは人によって異なると言いました。本当に初歩の初歩の人であれば、その人にピッタリな英語の絵本を見つければ良いだけです。例えば絵本を開いて片側のページに丸くて赤いリンゴの絵が描いていて、もう片方のページにはAppleとかRed appleとかRed round appleなどと書いているような絵本が良いと思います。これなら絵を見たらすぐに英語の意味がわかります。
このようなレベルの絵本を何冊、何十冊と読みながら、少しずつレベルを上げていけば、自然と長い文章も日本語に訳すことなく読めてしまいます。私の経験から感じたことは、日本語に訳さないと理解できないと思うのは、実は思い込みです。私たちは英語を学び始めた時から英語を日本語に訳す作業をしてきました。長年してきた日本語への翻訳という行為をいきなり無くしてしまうと不安で仕方なく感じるから、理解できた気にならないのではないでしょうか。そういう感覚は「そんな気がするだけ」だと思います。
実際に私が多読を始めたとき、不安で仕方ありませんでした。自分が読んでいる洋書の日本語訳が付いていないこと自体が不安でしたし、自分の理解があっているのかを答え合わせ的な物で確認する術がないのも不安だったのです。もうこの時点で奇妙です。今思えば「答え?は?」と自分に言ってやりたいです。英語オンチだった私が出す答えは、すべて間違っていて当然だったから仕方がないかもしれません。正解が出せない学生時代に負った傷を、いつまでも引きずっている場合ではないのです。
答え合わせができないといつまでも自信が持てない(不安が拭い去れない)と感じるのは、ただの思い込みと気がつきました。モヤモヤを抱えながらもずっと訳さないで、辞書を引かないでやっているうちに、それが普通になってしまい正解か不正解かなんて気にならなくなりました。それどころか自分の理解に自信も持てるようになってきました。その理由はおそらく、物語が面白かったからだと思います。面白いということは、ほぼ理解できているということだからです。細かい部分で誤解していても、この時点で気にする必要はありません。そんなことを気にするよりも、間違いを恐れずにどんどん読み続けることです。
実は私が自信を持てるようになるまでには、読みっぱなしではなく別のこともしたのですが、それはまた新たな記事にします。別のことと言っても多読に関することであり、辞書を引いたり翻訳本を読んだりするのではありません。
日本語に訳すことなく理解できるほどの簡単な英語の本を選び、訳さないで読む練習を続けてください。一度でできるものではありません。かなりの時間を要すると思います。私の経験では多読を初めて1年か2年の間は、ちょっと難しいと感じる部分は日本語で意味を考えてしまったりしていました。すべてを日本語にはしませんでしたが、部分的に訳してしまうという感じです。気がついた時点で訳すのをやめて、難しければそこを飛ばして読むということをしていました。それでOKだと思います。知らないうちに、以前は読み飛ばしていた部分も訳さずに普通に読めるようになってきます。
英語を日本語に訳さずに読んで理解するってどういうことか、やったことのない人はなかなかイメージしづらいかもしれません。言葉で説明するのは難しいのですが、英語を読んだ瞬間にその場面が映像となって頭に思い浮かぶような感じです。英語の文章を見た瞬間にそれが起こります。すぐにできるようになるものではないので、焦らずコツコツと、初めのうちはあまり気にせずにとにかく浴びるように無心になって英語の本を読むことです。
英語の文章を完璧に理解する必要はない
何のためにリーディング力を伸ばしたいと思っているか、その目的にもよるのですが、洋書や新聞などを読んだりその他多くの読み物は、一言一句完璧に理解しなければならないものは多くありません。重要な契約を結んだりするなど、一語の見落としや読み違いで大きな損害が発生するような場合には、一言一句正確に読み取る必要があると思いますが、そんな場面ばかりではないですよね。
日本語に置き換えてみるとわかると思うのですが、私たちは当たり前に母国語である日本語を読むことができています。一日にどれだけの文字を読んで理解しているでしょう。考えたこともないですが、かなりあると思います。そのすべての場面で一言一句、完璧に読み間違えなく理解することを求められているでしょうか。そんなことはないと思います。そんな世の中だと、息が詰まりそうです。
英語も同じで、完璧に読みこなせなければダメというのではなく、サラサラと読んで大まかな内容を素早く理解する力を求められる場面の方が多いのです。木の細部を細かく見て森を見れていないよりは、森の概要を短時間でざっと把握する力のほうが、より重要だと思います。それができて初めて、木の細部を見る力を持つことに価値が出るのです。だからまずは完璧を求めずにどんどん読んで、知らない単語は推測しながら読み進める訓練をすると良いと思います。
楽しみが最優先!成果は後からついてくる
リーディング力を伸ばしたいと思うなら、英語を読むことを楽しみましょう。「楽しみましょう」という言葉は、あちこちで言われていますが、楽しむってどうやって?という疑問を持つ人は多いと思います。楽しむためには、嫌なことをやってはいけません。煩わしいことも排除しましょう。難しいことも避けましょう。我慢もすべきではありません。努力もしないほうが良いでしょう。
たくさん書きましたが、要するに好きなことだけするということです。唐突ですがイチローさんが引退されました。引退会見の中で一言一句正確には覚えていないのですが、イチローさんは「我慢をしたことがない」「好きなことだけ、やりたいことだけやっていた」というような内容のことを話されていたと思います。これって、私が英語嫌いから脱することができた方法と同じなので、びっくりしました。
本当に英語が大嫌いだった私。学生時代に受験生になっても英語を捨てて一切勉強しなかった私。社会人になったら英語とは無縁の暮らしをしたいと思っていた私。そんな私がなぜ今英語が大好きで、洋書を読むことが趣味というより暮らしの一部になってしまっているのか。生きがいといってもいいです。
それは嫌なことは一切しなかったからです。英語の勉強をしなかった。辞書を使わなかった。私には難しいと感じていた日本語訳をしなかった。文法の勉強をしなかった。単語を覚えようとしなかった。じゃあ何をした?といえば、この記事で書いているようなことです。
20代の私の英語力は、中学を卒業した日本人の中でも底辺レベルでした。中1レベルも危うかったぐらいです。カタカナの言葉も全く意味がわからないので嫌いでした。そんなレベルからでも大丈夫なんです。1.辞書を使わず、2.日本語に訳さずイメージで理解する。そして3つ目は、完璧を目指さないことです。完璧を目指さないということです。最後に4つ目は楽しむことです。読んだ英語の本の中に、いくつも意味のわからない単語やフレーズがあっても、1ページ丸ごとわからなくても、わかる部分だけでその英語の本が楽しめたらそれでヨシとして良いのです。
わからないことがたくさんあるのに楽しむって、何か矛盾しているように感じますよね。私も初めはその矛盾に苦しんだというか、混乱しました。私の場合はこうやって解決したのです。それは英語の勉強をやめたことです。英語を伸ばそうという気持ちを捨ててしまい、ただ娯楽のために洋書を読んで楽しむことに切り替えました。ゴールを捨てたように見えますよね。その当時は半分ヤケになっていたかもしれません。でも結果、英語の勉強をやめたことで洋書を楽しく読み続けることができました。皮肉なものです。
王道がダメでも他に道がある!あきらめないで
最後にもう一度念を押しますが、この内容は順調に英語を勉強して英語力を伸ばしていける人にあてたものではありません。英語の勉強が苦手なのだけど、何とか英語力を伸ばす方法はないか模索している人や、ずっと英語の勉強をしているけれど、思うように成果が現れない人に向けた内容です。この方法がベストというのではないのです。私のように、王道と言われる英語の勉強法をやっても上手くいかない人でもあきらめるのはまだ早いし、他にいくらでも道はあるということを発信するのが目的です。適宜、ご自身の判断でお試しください。