もっと洋書を楽に読むための語彙集 Vol.2 デイヴィッド・ウィーズナーのThe Three Pigsから

英語の多読は易しい絵本から始めましょう!といっても、意外と語彙が難しかったり、知っている単語なのに意味がわからないということが多いです。本当はわからないところは放置して先へ進んでもよいのですが、せっかくだからできるだけ記憶に残したい!とか、わからない部分が知りたい!と思う方のために、辞書をひくとわかる言葉以外のところを中心に、できるだけわかりやすく解説していきます。

『The Three Pigs』

洋書のタイトルは『The Three Pigs』。

日本語のタイトルは『3びきのぶたたち』です。

David Wiesner作(ディビッド・ウィズナー作)です。この洋書絵本の中から、いくつかフレーズを拾ってみたいと思います。

この洋書絵本『The Three Pigs』は、ページ番号が書かれていないので、場所を指定するために「いくつ目の見開き」という表現を使います。ストーリーが始まる見開きページを「1つ目の見開き」とします。この洋書は見開きが20まであります。

2つ目の見開き alongは「平行して」 その他

<1コマ目> alongは「平行して」

Along came a wolf, who knocked at the door and said, …
そこにオオカミがやってきて、ドアをたたいて言いました。・・・

この訳文だと、alongは「そこに」となります。「平行して」じゃないの?と思った方はちょっと待ってください。
この文章の前にこんな文章があります。 The first pig decided to built a house, and he built it out of straw. (前のページの最終行にあります。)

意味は「1匹目のブタはワラで家を建てることにしました。」となります。

この後alongのある文章が続きます。このalongは何かと平行している状態を表すイメージです。家の完成と平行してオオカミが現れた、つまり家の完成から時間を置かずにオオカミが来たのです。これをウマイ日本語にしたのが「そこに」です。

alongというと英語オンチだった昔の私は、「~に沿って」という意味しか知りませんでした。でも「何かに沿う」ということは、=「何かと同時」に、または=「何かに平行している」状態を表します。言葉にすると別物のような気がするけれど、イメージしてみると、ほとんど変わらない気がします。

alongのイメージ

上の図はalongのイメージです。空間軸で見ると、黒と赤の矢印は平行に、互いに沿って存在しています。一緒にいると表現できそうです。実際、alongは「一緒」という意味合いでも使われます。come alongは「一緒に来る、同行する」という意味ですね。時間軸で見ると、同時期に存在していますから、この視点でも「一緒に」という意味として理解してもよさそうです。

<2コマ目> Not by the hair of my chinny-chin-chin. て?

“Not by the hair of my chinny-chin-chin.”とはどういう意味でしょう?
Notは「だめ、嫌」で、chinは「あご」、「僕のあごひげにかけても、絶対にだめ!」という意味になります。Chinny-chin-chinが楽しいリズム感を出していますね。

<3コマ目のふき出し> right は「正」

Hey! He blew me right out of the story!
わぁ!お話の外まで吹き飛ばされちゃった!

rightは言葉の意味を強めるために使われる「強意語」として使われます。日本語にすると「まさに、まさしく」あたりでしょうか。ところでrightは「正しい」という意味がありますよね。こっちのほうが強意語としての意味よりも良く知られているかもしれません。実は「まさしく・まさに」は、感じで書くと「正(まさ)しく・正(まさ)に」です。日本語をちゃんと勉強してきた人には当たり前すぎることでしょうが、「正しく」と書くよりも「まさしく」と書いている文章を見るほうが多い気がするので、「はっ!」とする人は意外と多いのではないでしょうか。私がそうだったので、そう思うだけでしょうか(笑)

「まさしく、まさに」とは「間違いなく」という意味なので、確かにright=「正」なのですよね。こうして考えると当たり前に感じるのですが、rightの意味は「正しい」のほか、「強意語」としても使われますなんて言われると「ん?」と一瞬思考停止してしまいそうです。でもわかってしまえばもう問題なしですね!

<4コマ目> 余談ですが、絵に注目

英語のことではないのですが・・・。4コマ目、オオカミはブタを食べたと書いていますが、ブタを食べた顔をしているでしょうか?この奇抜なストーリー展開についていっていなければ、このオオカミの表情、理解できません。私は一読め、いまひとつ理解できていませんでした!食べたの?食べてないの?どっち?とすっきりしなかったのです。2回目に読んでやっとすっきり。

3つ目の見開き build …out of… 「・・・から作る」 その他

<1コマ目> built …out of… 「・・・から作った」

Now, the second pig built his house out of sticks.
さて、2番目のブタは木の枝で家を作りました。

out of…は、「~から作り出して」「~を材料として」という意味で、buildのほか、makeと一緒に使われます。多読していると頻出しますよ。たとえば He made a bookcase out of cardboard boxes.なんていう表現ができます。日本語にするときは、「彼はダンボール箱で本棚を作りました。」としましょう。「作り出して」とか「材料として」なんて訳すとなんか変ですものね。頭の中で理解するためにだけ、「作り出す」とか「材料として」をインプットしましょう。

<2コマ目のふき出し> room は「空間」

Now we have room to move. Watch this – oops!
「いまや じゆうのみってわけだ。みろよ、これ-おっとっと!」

上の日本語訳は、絵本から抜粋しました。自然な表現で違和感がないと思いますが、原文と照らし合わせてみるとどうしてこうなるの?という方がいらっしゃるかもしれないので、私なりの解釈を以下に付け加えます。

「じゆうのみ(自由の身)」というところが “room to move” に該当していそうです。絵本という2次元の世界にいたブタが、どういうわけか絵本の外の異次元に抜け出したことにより、自由に動ける空間を手に入れたよという意味です。絵本の中の絵(ブタ)は動きませんからね。絵本という枠を抜け出したことにより、自由に動き回って好き勝手に発言もできるようになったのですね。

私が訳すとしたら・・・「ねぇ、ぼくたち動けるよ。みてこれ-おっとっと!」 we have room to moveという表現は、身体を動かすための空間があることを意味しているのですね。

17個目の見開き notice 「気づく」 その他

白黒のブタのふき出し notice は「気づく」

Notice the brickwork.
「レンガ造りなんだよ。」

上の訳も絵本からの抜粋です。「なんだよ」という言葉の中に「これ(絵)を見たらわかる(気づく)だろう?」という意味が込められています。

Dragonのふき出し methinks 「私は思う I think」

A fine castle, methinks.
「じつにりっぱなおしろにおもわれますな。」

上の訳も絵本からの抜粋です。なぜこんな言い回しであるかと、methinksは深く関係しています。methinksは「私は~と考える、私には~と思われる」という意味で、シェークスピアの時代から使われていた古い英語です。このセリフを昔話に登場するDragonが言っているのですから、言い回しが古いはずですね。訳も古臭くて堅い印象を与えています。

調べてみると、methinksは最近”I think”のスラング形として、ツイッターなどで使われるようになったとのこと。スターウォーズで大ブレークしたらしいです。スターウォーズの映画の内容をあまり知らないのですが、古い英語を話すキャラクターがいるのでしょうか?

肌色のブタのふき出し You know what? 「ねぇ」

You know what? は「ねえ、あのさ」など会話を始めるときに、相手の注意をこちらに向けるときに言う言葉です。

オレンジ色のブタのふき出し pick … up 「拾い上げる」

Good idea. We just have to pick these up …
「いい考えだね。じゃあこれらを拾い上げて・・・」

そろそろ家に帰ろうか(または元の世界に戻ろうか)ということになり、絵本の世界に戻る準備のために発したセリフがWe just have to pick these upです。日本語の絵本では「こいつをもとにもどして・・・っと。」となっています。日本語だけ見ていたら、こちらのほうがわかりやすいかもしれません。けれど英語と見比べていたら、ひょっとしたら英語と違うと思う方がいるかもしれないので、以下に私の解釈を書きます。

絵本の世界に戻るためには、散らばった絵本のページを立てて、順番どおりに並べなくてはならないようです。そのことは次のページを見るとはっきりわかります。pickには「選択して拾い上げる」という意味があり、散らばった「いくつかの絵本のページ」(=these)をpick upする=pick these up となります。

日本語訳の絵本だけを見ていると、飛行機を折ったページだけを元に戻そうとしていると思えるかもしれませんが、それだけではなく、他のページも拾い上げて順番に並べ替える作業をしているのです。

『The Three Pigs』のおわりに

今回はいかがだったでしょうか?英語の多読は、簡単な絵本から始めてみましょうと言っても、意外と難しい絵本もあると思います。ここでは難解な部類の絵本は選びません。簡単で大人が読んでも面白い絵本を選んでいます。それでも辞書をさっと引いただけではうまく意味が見つけられない言葉があるものです。そういう言葉を拾い上げて、わかりやすく解説して多読のお手伝いをしたいと思います。

作者のデイビッド・ウィーズナーは、とても綺麗で迫力のある絵を描くので有名です。文字のない絵本もいくつかあり、コルデコット賞も受賞した絵本もあります。この『3びきのぶたたち』は、昔話の『3びきのこぶた』がベースになっています。予想もしない展開で、「えぇっ?!」と声をあげたのは私だけではないと思います^^

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